「無名上京アイドル」 ── それは、まだ何者でもなかった彼女たちが、自分たちの夢を信じて走り始めるための名前だった。メンバーとの別れ、届かなかった歌、受け取られずに客席を転がったサインボール。それでも立ち止まらず、何度も歌い続けた。悔しさも迷いも隠さず分け合ううちに、バラバラだった3人は、いつしか家族のような存在になっていた。2026年9月12日、渋谷FOWS。368日間をともに歩んだ名前に別れを告げ、彼女たちは新しい名前とともに、本当のスタートラインへ立つ。これは、最後まで「無名」を生き抜いた彩叶、姫歌、結名、それぞれの告白である。
お客さんとの信頼も、自分たちとの信頼もすごい強くなった
── 無名上京アイドルとして活動してきたなかで、3人にとって特に忘れられない出来事を教えてください。
夢乃結名(以下、結名) 前回のワンマンライブの前にやった決起会ですね。前回は4人だったんですけど、その時に一週間前くらいに姫ちゃんから「みんなで決起会やろう」って言われて、集まって事務所でやったんですけど、みんなでご飯を食べながら、本音で語り合ったというか……もともとグループを抜けようとしてたメンバーがいた中で、なんとかして4人でやっていこうよっていうのを姫ちゃんが泣きながら説得してくれて。で、その結果、彩叶ちゃんが残ってくれて、3人で家族になれてるので、私は忘れられない出来事はそれかなと思います。
結名 そうですね。多分グループを結成して初めて本音で話した気がしました。
── 活動を始めた頃と比べて、グループとして最も成長したと思うところはどこでしょう?
結名 それぞれがグループに対しての気持ちがすごく強くなったなって思ったのと、パフォーマンス中の対応力がすごい上がったなって。ミスしたときとか、今言うなら私が座ってパフォーマンスしてる中で、ステージによって上手にいるか下手にいるか変わってくるので。そのときに状況に応じて2人が、どう動くかとかっていうのを、今までは前もって練習して、バミリもちゃんと決めてってやってたのが、2人がそのときの空気感で変わったりしてくれるのが増えたので、すごい成長したなって思います。
── 彩叶さん、姫歌さん、結名さん、それぞれグループの中でどんな役割を担っていると思いますか?
結名 まず姫ちゃんはグループの軸となる人。グループとして「あれをしよう、これをしよう」っていうのを提案してくれるのも姫ちゃんだし、引っ張ってくれるのも姫ちゃん。リーダーとして、最年長としてやってくれてるのもそうだし、私たちも、「あ、姫ちゃんが頑張ってるからやらなきゃ」っていう風に思わせてくれるんです。彩叶ちゃんは空気感を作るっていうか……練習のときもそうだし、ライブのときもニコニコしている彩叶ちゃんがいることによって、すごくその場が柔らかくなる。ライブ中もストレートに思いを伝えてる分、強くなりすぎちゃうところも多分あると思うんですけど、彩叶ちゃんがニコニコってステージに立ってるだけで、アイドルとして成立する(笑)。で、練習中もちょっと行き詰まったとき、私と姫ちゃんがぶつかるんですけど、彩叶ちゃんが「ここ、こうしたらどう?」って提案してくれたり。いい空気感を作る存在かなって思ってます。私は結構ズバッと言うっていうか、パフォーマンスの部分でも、こうしてほしい、こうしてほしいっていうのを言うようにしてるので。パフォーマンス部門でちょっと見直していただけたらと。
── 9月12日のワンマンライブに向けて、渋谷XXIで何度もフリーライブを行っています。この場所でライブを続けることには、どんな意味がありますか?
結名 まずXXIという場所が道沿いで、ガラス面になっているので、やっぱり通る人の目に入って、立ち止まりやすいし、音も聞こえやすかったりもするので、そのいいところをうまく使えてるんじゃないかなっていう思いで、たくさんの人に触れるいい場所だなと思ってます。
── フリーライブを重ねるなかで、パフォーマンスやお客さんとの関係にどのような変化を感じていますか?
結名 さっきと被りますけど、パフォーマンスは臨機応変に対応できるようになった。一度、パフォーマンス中に曲が止まっちゃったこともあったんですけど、みんなの「続ける? やべ」みたいな感じいなったときでも、お客さんが手拍子をしてくれたから、姫ちゃんもリズムが取れたし、お客さんとの信頼も強くなったと思うし、自分たちとの信頼関係もすごい強くなったなって思います。
── XXIは狭いですし、パフォーマンスに限りがあるというか、踊りにくいのは問題がないですか?
結名 あります。ありますが、パフォーマンスはもちろんだけど、まず歌を届けたいっていうのが自分たちの中にあるので。まずは曲を聴いてもらわないとパフォーマンスも見てもらえないから。まずは曲を聴いてもらって。で、最近は入ってくる人も増えてきたので、ステージでやってっていう感じなんですけど、ステージでやる分には3人なら十分踊れるので。
── XXIでライブ中や終演後に起きた特に印象に残っている出来事は?
結名 曲が止まったことです。 やっぱ初めてだったので、曲が止まったっていうのが。「どうしよう」ってなったけど。でも自分たちの強みは歌だから。ここで止まっちゃったら活かしきれないと思って。姫ちゃんの一番の見せ場だったっていうのはあるんですけど、そこでみんなでアカペラで歌ったのは、多分お客さんからしても印象に残ったと思うし、自分たちからしても逆に良かったかなって思いました。
無名が取れたらもっと有名になっていかなきゃ
── 9月12日には新しいグループ名が発表されます。「無名上京アイドル」という名前で過ごしてきた時間を今どのように振り返ってますか?
結名 最初は本当に「無名上京アイドル」という名前が嫌で嫌でしょうがなくて。「早く変えよう、早く変えよう」って思ってたんですけど。実際ここまでやってみたら、無名上京アイドルっていう文字のインパクトはすごく強いので、フライヤーを見て「名前だけ知ってます」とか「聞いたことあります、見たことあります」っていう方がライブやってる中ですごく多かったので。それで名前だけでも知ってくださってて、「名前知ってたからライブ見てたよ」って言ってくださる方もすごく多かったので、今はその名前に感謝しかないですね。それで今は良かったなって思います。
── 新しいグループ名はどんな名前なのかヒントを教えてください。
結名 シンプルです。ファンの方が聞いても納得……納得して、まあ、意味までちゃんと説明して、「ああ、なるほどね」とはなると思います。
結名 はい。他の二人も多分、みんな候補で入れてたものになってるので。
── グループ名が変わることで、自分たちの意識とか、これから表現したいものはどのように変わっていきそうでしょうか?
結名 根本になるものはやっぱ変わらないと思うんです。“夢を持つことは素晴らしい”っていうのはもちろん変わらずあるんですが。名前が変わったからこそ、より強く届ける。重くなったっていうか。今は無名だからっていうのがあったけど、無名が取れた分もっと有名になっていかなきゃいけないっていう思いがあります。無名=名前がないわけだから、がむしゃら感があったけど、無名を反対に言うと有名になっちゃう。その分責任感っていうか、歌詞一個一個の責任感もそうだし、届ける側としてちゃんと誠実にっていうのもあります。やっとスタートラインに立てて、責任重大ですよね。
── 結名さん自身が活動を始めた頃と比べて最も成長したと思うところはどこでしょう?
結名 振付のスピードかな。あと、振り付けのバリエーションが増えた気がしてます。
結名 振り付けはもともと苦手で、フリーで作るっていうのが。いつか自分たちの曲で作ってみたいですっていうのを言ってたんですけど、プロデューサーさんから「行こう」と言われて、「あ、マジか」みたいな(笑)。最初のカバー曲から始まったんですけど、カバー曲のときに、構成とかも考えてっていうのが本当に苦手で、いろいろ考えた結果、「なんか違う」って言われて、「あ、無理」ってなったんですよ、最初は(笑)。そこから「あくび」になったんですけど、「あくび」は一人で作ったわけじゃないんですけど、マネージャーさんも一緒に作ったりとか、メンバーとも作ったりして、助けてもらいながらいろいろやってたんですけど。いまは一人で作るのもあるけど、マネージャーさんと二人でとか。「この曲はこうだから」って作り方が分かってきたっていうか。 物語を決めて、その物語に合った動きをするみたいな。そういうのをやるようになってからスムーズになったし、いまでは2人もいろんな意見出してくれて、「あ、じゃあこういうのだったら、ここをこう変えたらもっと良くなるよね」みたいなのを取り入れつつ、ダンスっぽくしながらより良くしていけるようになったかなって。
── じゃあ最初に自分が振り付けた振り付け見るとイマイチ?
結名 もっとこうしていきたいなっていうのはありますね。成長して頭が柔らかくなったというか。 最初はもっと踊りたいとか自分勝手な感じで作ってたけど、いまは2人が踊りやすいように、歌いやすいように、こうしたらキャッチーだよねとかっていうのを簡単に考えられるようになったっていうか、振りをシンプルにできるようになったっていうのが一番大きいかもしれないです。元々ダンスがメインでやるグループじゃないって言われていて<その中でダンスしかやってこなかった自分が振り付けをするっていうのが、どうしてもわからなくて。「アイドルの振り付けって何?」って。でも、女性のアイドルや男性アイドルも、もちろん海外のダンサーさんの動画もいろいろ見るようになって、「あ、こういう感じでいいんだ」みたいな。 シンプルだけどちゃんと音も取ってて、振り付けも可愛いし伝わるしっていうのが分かってきて。可愛い振り付けが出てくるようになりましたね。いまももちろんガンガン踊りたいけど、歌を届けたいっていうのがグループの根本にあるので。
── 現在の自分にとってまだ乗り越えたい課題や、ワンマンまでに身につけたいものはありますか?
結名 歌ですね〜。まだ外しちゃったりしますから。2人がうますぎるっていうのがもちろんなんですけど……早く追いつきたいっていう感じです。声量だし、声の出し方、あとビブラートが本当に苦手なので、それを早く身につけたいです。
── 9月12日のワンマンライブをどんな一日にしたいでしょう?
結名 9月12日は自分たちが新しく変わる日でもあるので。無名上京アイドルとしてちゃんと区切りをつける日。で、新しいグループ名としてスタートする日なので、やっぱり自分たちにとっても、お客さんにとっても忘れられない日したいですし。前回よりメンバーが減ったからこそ、さらに強くなった自分たちをお客さんに届けたい。「大丈夫だよ、私たち」っていうのを伝えられるライブにしたいです。
── 最後にライブ前に他の二人にどんな言葉をかけますか?
結名 大丈夫っていう一言かなって。本番はもう楽しむしかないので、もう大丈夫だよって。
🕰️ 𝐎𝐏𝐄𝐍 𝟏𝟕:𝟏𝟓/𝐒𝐓𝐀𝐑𝐓 𝟏𝟖: 𝟎𝟎