インタビュー
【インタビュー】“強さ”から“リアル”へーーフィメールラッパー・MaRIが語る新EP『Trophy Bitch』
2025.10.25 11:36
フィメールラッパーのMaRIが、10月15日(水)に新EP『Trophy Bitch』をリリースした。

今作は、彼女の“Bad Bitch”な一面を前面に押し出したパワフルなラップから、アフロビーツを取り入れた心地よいトラック、そしてメッセージ性の強いR&Bまで、多彩なサウンドが詰まった渾身の1枚だ。

横浜アリーナ公演を控え話題沸騰中のLANAや、実力派シンガーIllnanaも参加し、これまでのMaRIファンはもちろん、新たなリスナー層も惹きつける、進化を続けるMaRIの魅力を存分に味わえる作品となっている。

今回、同作の発売に伴い、MaRIにインタビューを敢行。彼女が語った、制作の裏側やこれからのビジョンとは?
 
ーータイトルの『Trophy Bitch』にはどのような意味や想いが込められていますか?

MaRI この言葉は“Not your Mama”という曲のバースにも入っているのですが、男の人が自分のステータスを上げるために選ぶ女性という意味があります。“Bitch”っていう言葉は日本だと悪い意味に捉えられがちですが、実際は“カッコいい女”“イケてる女”のような良い意味もあって。喧嘩している状態で出る“Bitch”は悪口だと思いますが、それ以外の場合ではマイナスに捉えることはないですね。

ーージャケット写真はすごく攻めたビジュアルになっていますが、こちらにはどのような意味が込められていますか?

MaRI 女性の見方になりつつ、男を虜に。男に支配されない強い女性という感じですかね。自分ではそういうイメージでやっています。その写真見ただけで“強そう”みたいな。
 
 
ーー作品を作る上でコンセプトのようなものは決めましたか?

MaRI プロデューサーのJAZEE MINORと最近起こったこととかをよく話すんですけど、その中で“このテーマいいね”ってなったことをもとに曲作りをすることが多いです。なので、いつも“こういう曲を作ろう”みたいに前もって決めるというよりかは、会話の中で良いと思ったことから決めているような感じがします。

ーーディスカッションしていく中でお互いにインスピレーションが湧いてくるということですね。

MaRI そうですね。私が客演に入る時はしっかりテーマに沿ってリリックを書くからこそ、自分の曲はプロデューサーとたくさん話して制作してるかもしれないですね。トラック作りに関してもけっこう言います。JAZEEくんが好きなビートもあれば、MaRIが好きなビートもありますしね。それこそ「Not Your Mama」はアフロビート(ナイジェリアを起源とするファンクやジャズの影響を受けた音楽ジャンル)だったので、新しい挑戦の1つでした。このビートを聴いた時、フックにLANAちゃんの素敵な歌声を入れたいって思いました。こういう曲はLANAちゃんとやってみたいっていう想いもありましたし、LANAちゃん自身もアフロビートは初めてだったみたいで、2人とも新鮮な感じでした。それにしてはすごく良い曲が作れたし、聴いたら踊っちゃうような曲に仕上がりましたね。
 
 
ーー前作『PENTHOUSE』では、全体的に重厚感のあるトラックが印象的でしたが、今作ではこれまでとは異なる方向性の楽曲が多いように感じました。こうした新しいスタイルに挑戦する上で、難しさを感じることはありましたか?

MaRI 難しかったですけど、やってみて無理だったら出さないし、カッコよかったら出すっていうやり方で進めていました。なので、いろいろな歌い方を試しましたね。5曲目に入っている「Alright」っていう曲は、私自身かなり気に入っているんですけど、今まで見せてこなかった一面を見せたいと思って、少ししんみりした感じで歌っています。結果すごく良いものになったし、苦労したというよりかは新しい自分を見つけることができて楽しかったっていう印象が強いですかね。

ーーこの楽曲はIllnanaさんが客演として参加されていますが、どのような経緯でコラボが実現したのでしょうか?

MaRI JAZEEくんが紹介してくれたんですけど、すごくいい歌声で。アルバムのタイトルが『Trophy Bitch』ということもあって、客演には女の子だけを入れたいと思っていたので、“nanaちゃんがいいな”ってなりました。吸い込まれるような、癒される歌声を持っていて、この曲に1番合うんじゃないかなって思ったんです。なので、この曲、けっこうみんなグサッと来ると思います(笑)。声の相性もすごく良くて、私も“トライしてみて良かったな”って思いました。

ーー本質的な部分で、シンガーとしての幅が広がった印象を受けました

MaRI 嬉しい。自分は重低音の重い曲が好きだけど、これからはもっといろいろなビートにトライしたいなと思います。自分の好きな感じをやりつつ、重低音が好みじゃない人も聴けるような曲も作りたいですね。

ーー「MAGURO」は、これまでの方向性に近い楽曲だと感じましたが、どのような流れで制作されたのでしょうか?

MaRI 今までのネクストレベルみたいな感じです。これまで出してきた強い感じというよりは、“カッコいい”みたいな。でも、面白いですよね(笑)。“MaRI、何言っとんねん!”みたいな。でも、ちゃんとバースを聴いたら“わかる”ってなる曲だと思います。聴き心地もいいし、中毒性がある。寿司食べるたびにMaRIの顔、思い浮かぶみたいな(笑)

ーー1曲目の「お察し」は以前にも発売された楽曲ですが、この曲はどのようなイメージで制作しましたか?

MaRI 掛け声っぽいフックが欲しくて作った楽曲ですね。歌詞の“短いその物差し”の物差しは1人の人間としての考え方や視野、男性の下半身の意味もあります。“お前の考えは狭い”“視野が狭い・自由がない”といったような想いが込められていますね。“周りはフェイク友達”っていう歌詞は、私が上辺な人間が嫌いっていうところから来ています。見栄を張るために有名人やお金持ちに近づくみたいなのは、本当にクソ喰らえって思っているので、それに対するメッセージを込めています。“フェイク友達分からない時点でお察し”はそれを理解していない時点でもう大丈夫ですって感じだし、“心中お察しします”はちょっとふざけを入れたくて(笑)。日本っぽいリリックだし、敬語ってちょっと舐めてるじゃないですか。それがけっこうマッチしていて、カッコいいフックができたなと思います。
 
 
ーーリリックは、どのような時に作ることが多いのですか?

MaRI スタジオでJAZEEくんといつもアイディアを出し合って作っています。事前にこういう曲を作りたいって思う時もあります。けっこうバラバラですね(笑)。

ーー言葉はスラスラ出てくる感じ?

MaRI 出てくる時もあれば、出てこない時もあります。差が激しい。

ーー出てこない時はどうすることが多いですか?

MaRI 何もやらないです。子どもと触れ合って公園行ってチルして、いっぱい遊んだりクラブ行ったりします。そこからリリックとかやりたい曲が出てきます。普通にビートとかをいっぱい聴いて、“こういうのもいいな”ってなる時もあるので、マジでバラバラですね。気分屋さん(笑)

ーー今回の作品の中で、リリックを作るのが大変だった楽曲は?

MaRI それこそ1番気に入っている「Alright」かもしれない。やっぱり慣れていないから、難しかったです。でも、1番いいなって思ってます。新しい自分だから。

ーー特に好きなバースはありますか?

MaRI “集合場所は近所のアピタ 今じゃAKと横浜アリーナ”“響かせた世界中にDear mama もう大丈夫って言えるよ今なら”。ここですかね。近所のアピタって、家から10分くらいの小〜高校生の時に友達とかと溜まる場所だったんですよ。そこで音楽を聴いたり、行けば誰かいるみたいな。そんな風に金も何もかもなかった私が、今じゃAK(AK-69)さんと横浜アリーナに立って、しかもそこで「Dear Mama」っていう亡くなったお母さんに対する曲も歌えて。ママへのメッセージをみんなに伝えることができたし、もう私は大丈夫だよっていう意味を込めています。

ーーなるほど。

MaRI 2バース目もけっこう好きです。“経験しなくてもいいようなこと 両手でも数えきれない”“人生ゲームならば不利 でもあの日の痛みが武器”。不幸なこととか、つらいことがあったらそれが武器になるよっていう。自分でもこの部分を聞く時、いつも元気をもらいます。

ーー“強い女性像”を描くことが1つの大きなテーマになっていると思うんですが、実際には、強く生きることができない女性も多いと思います。そういった現実をどう捉えていますか

MaRI そうなんですよね。音楽って、1人で聴く時もあれば、みんなで聴く時もあって、その時の気分や状況によって選ぶ曲って変わると思うんです。やっぱり1人でいる時って、しんみりした曲を聴きたくなることがあると思うんですけど、「Alright」はまさにそういうときに響く曲だと思ってます。この曲を聴いて、“負けない”とか“つらくても大丈夫”って思ってもらえたら嬉しいし、“こんなMaRIでも頑張れてるんだから、自分も頑張ろう”って思ってもらえたらいいなって。
 
 
ーーアーティストはステージに立つまでの苦労が多いと思いますが、その点に関してはいかがでしょうか?

MaRI マジで大変でした。客いないライブとかありましたからね(笑)。本当に大変だったし、それが短かった訳でもないけど、そういう時期があって良かったと思います。最初の方はクラブバンガーな曲しか出してなかったけど、今は視野を広げてお母さんのことや人に共感してもらえるような歌も歌えるようになったので、これからも続けていきたいです。

ーー日常の中で、インスピレーションが湧くのはどのような瞬間が多いですか?

MaRI ママやっている時とか家のことをやっている時とかですね。あとは恋愛した時とか? 生活のすべてが自分の表現につながっていますね。あとは欲しいものを入れることが多いです。手に入れたいものをリリックに入れると、マジで手に入ることが多いんですよ。びっくりする。その力ってすごいなって思いますね。

ーー今立ってみたいステージはありますか?

MaRI 自分、客演は多いんですけど、持ち曲がまだ少ないので、ワンマンライブってあまりやったことがないんですよ。だから、Zeppとか武道館を借りて、ワンマンをやるのがまず1つの目標です。でも、最終的には世界に行きたいですね。ただ、一気にドーンと行くのは違うと思ってて。ちゃんと1個1個、ステップ踏んで進んでいきたいです。

ーーそういった目標がある中で、今回のEPはどのような位置付けになるのでしょうか?

MaRI 前のEPよりは確実にレベルアップしていて、いろんな方に聞いてもらえるEPになったのかなとは思います。それこそ「Dear Mama」を出したおかげで、こういうしんみりした曲に合わせて自分の心のうちを出せるようになったなと感じていますね。
 
 
ーーーこれまでは、“強い女性像”をしっかり打ち出さなきゃいけないという気持ちがあったかと思いますが、今は逆に、もっと赤裸々な部分を出せるようになってきた感覚もありますか?

MaRI ありますね。ずっと“泣いてることなんてなさそうな強い女性”みたいなイメージだったと思うんですよね。だけどママが亡くなって数年でママの曲なんて作れるわけがないし、ママへの気持ちを1曲にまとめられるわけがないってずっと思ってたんです。それをJAZEEくんにもずっと伝えてましたし、AKさんのお母さんもご病気なので、お互い楽屋で泣きながら語ったりしました。そこから曲を作ったんですけど、AKさんとそういうしんみりした曲のレコーディングは初めてで。でも、MaRIもこういう曲が作れるということがわかって、けっこう楽になったというか。1曲にまとめるっていうのをやめて、ちょこちょこ出していきたいなと思います。

ーーそれらを踏まえて、今後どういう楽曲を作っていきたいですか?

MaRI いろんなものに挑戦していきたいタイプなので、具体的にはわからないです。でも、これから自分の人生に起きていくリアルなことを、きちんと届けていきたいですね。

MaRI『Trophy Bitch』


配信日:2025年10月15日(水)
配信リンク:https://mari.bfan.link/TrophyBitch

■トラックリスト
1.お察し
2.MAGURO
3.Safada (skit)
4.Not Your Mama
5.Alright
 
MaRI プロフィール
 
ブラジルにルーツを持つ岐阜県出身のフィメールラッパー。
2021年にリリースした「BUM BUM」がクラブバンカーとしてヒットし、一気にスターダムへと駆け上がった。2023年4月には男が耳を塞ぎたくなるような過激なリリックを駆使し、まさにビッチアンセムになるであろう1st EP『PENTHOUSE』をリリース。
また、AK-69、Yellow Bucks、DJ RYOWなどシーンを代表するアーティストとの客演を果たす。さらに大ヒットした「Bad Bitch 美学」や「チーム友達(東海REMIX)」にも参加するなど、フィーチャリングクイーンとしての存在感も発揮している。2024年にはニューシングル「不良外国人 feat. MIYACHI & AKLO」がスマッシュヒット。
8月より全国20を超える都市でのクラブツアーを開催するなど、今最も話題と勢いのあるフィメールラッパー。

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