『しらぬひ』は、『君の名は。』『すずめの戸締まり』などを手がけたアニメーションスタジオ・コミックス・ウェーブ・フィルムの最新作。ギャガ配給にて、新宿バルト9ほか全国で順次公開中の短篇アニメーション映画となる。
監督は、商業アニメーション映画初挑戦となる新鋭・片野坂亮。スーパーの鮮魚コーナーで働く傍ら、フリーの映像作家として実写映画やアニメーション作品の自主制作を続けてきた手腕がコミックス・ウェーブ・フィルムに認められ、抜擢された。同スタジオが培ってきた繊細な映像表現と、片野坂監督の感性が交差し、美しさの奥に残酷さが潜む物語が誕生した。
物語の舞台は1996年、夏の終わり。熊本の海辺の町で暮らす10才の少年・湊は、酒に溺れる父とふたりきりで、息をひそめるように生きていた。唯一の心の拠り所は、弁天島に現れる少女の神さま“べんちゃん”。しかし、児童養護施設への湊の一時保護が決まり、べんちゃんとの別れの時が迫る。湊は、ひとつだけ願いを叶えてくれるという海に浮かぶ不思議な光<しらぬひ>に祈りを捧げるが、父への憎しみが募るにつれ、その“祈り”は取り返しのつかない“呪い”へと姿を変えていく。
主人公・湊の声を担うのは、あの。湊の唯一の友である少女の神さま・べんちゃん役を花澤香菜、湊の父親・マサル役を三木眞一郎が務める。
べんちゃんは、静かな海辺の町で暮らす孤独な少年・湊にとって、唯一の心の拠りどころとなる存在。弁天島にぽつんとたたずむ祠に宿る、少女の姿をした神さまだ。彼女と過ごすひとときだけが、湊にとって自分を取り戻せる時間だったが、湊以外の人間には存在を忘れ去られ、べんちゃんの身体は少しずつ消えかかっていた。
公開中の予告編では、幻想的に揺らめく光<しらぬひ>が海上に灯る中、べんちゃんが“「しらぬひ」はね、お願いを叶えてくれるよ”と湊に語りかける。神秘的な光に向けて湊は純粋な祈りを捧げるが、彼を襲う残酷な現実が、その祈りを次第に呪いへと変えていく。
今回公開された場面カットでは、身体が透明になりつつあるべんちゃんの姿が描かれている。夕景に照らされながら弁天島の祠に祈る湊の姿や、べんちゃんの存在を唯一知っている湊とのかけがえのない時間を大切にしていることがうかがえるカットも公開。儚げに微笑むべんちゃんの姿からは、ふっと消えてしまいそうな繊細さと、湊に向ける優しさがにじむ。
べんちゃん役を務める花澤香菜は、『羅小黒戦記』シリーズ、『劇場版 呪術廻戦 0』、『鬼滅の刃』、『化物語』、『PSYCHO-PASS』、『五等分の花嫁』など、多数の作品で活躍してきた声優。本作では、湊の孤独に寄り添うべんちゃんの温かさと儚さに命を吹き込んでいる。
キャスト発表時、花澤は“不器用に懸命に生きている湊の姿を、ただひとり見守っているべんちゃん。美しい映像とは対照的に、湊の孤独や恨みに胸が痛みます。観ている皆さまにも、べんちゃんと一緒に彼の隣にいてあげてほしいです。場面によって、神々しかったり親しみやすいお姉さんだったり印象が変わるべんちゃんですが、彼女が何者なのかにも注目してみてください!”というコメントを寄せていた。
片野坂監督は、べんちゃんについて“殺伐とした世界の中での救い”と表現。花澤がその存在を声だけで表現し、観る人の心を包み込んでくれたと語っている。
併せて公開された本編シーンの舞台は、弁天島の祠。拝む湊のもとへやってきたべんちゃんが、“これまたずいぶん大きなお供え物だ。今日も来てくれたんだね”と、包み込むような温かな笑顔と声で語りかける。日頃は険しい表情ばかりの湊も、べんちゃんの前では柔らかな顔を見せ、彼にとってべんちゃんがどれだけ大切な存在であるかが伝わる場面となっている。
一方、湊はべんちゃんの身体が少しずつ透明になっていることに気づく。存在を忘れ去られたら消えてしまうという事実をべんちゃんから聞かされた湊は、“俺がいなくなるから”とぽつりと漏らす。そんな湊に対し、べんちゃんは“それでいいんだよ”と微笑みながら語りかける。苦しい生活に喘ぐ湊を深く案じ、新天地へと背中を押そうとする、切ないほどの優しさが感じられるシーンだ。
ストーリー
『しらぬひ』(読み:しらぬい)
出演:あの / 花澤香菜 / 三木眞一郎
原作・脚本・監督・作画監督:片野坂亮
音楽:梅林太郎
主題歌:青葉市子「しらぬひ」(hermine)
美術監督:小林海聖
色彩設計:山本智子
撮影監督:津田涼介
制作プロデューサー:濱﨑周平
プロデューサー:新井修平
アニメーション制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
製作:しらぬひ製作委員会
配給:ギャガ
2026年 / 日本 / カラー / ビスタ / 5.1ch / 36分